断熱材の吸水と罹災証明

現代住宅では,床や壁に断熱材が使われています.グラスウールが多く使われていますが,浸水して吸水すると乾かず,カビが発生します.また,壁に使われている石膏ボードも断熱材の水分によりカビます.カビは,アレルギーや喘息の方だと症状を増悪します.また,断熱性の低下といった居住性だけでなく,筋交いや柱の腐朽,金物の接合部の錆による強度低下等の耐震性の低下が懸念されます.床上浸水したら,断熱材が吸水していないか確認して下さい.(除去には幾つか注意点があるので,水害経験豊富なボランティア団体にお願いするか,業者にお願いするかどちらかになると思います)


壁の断熱材が吸水していないか確認する方法

3つの例を示します.
※短時間の床上浸水では断熱材が濡れずに済むケースもあるので,確認してから壁の部分解体(浸水深+αまで,石膏ボードと断熱材を切断する)を行って下さい.

  1. コンセントボックスを外す(感電しないようにブレーカーを落として下さい)
  2. 非接触型水分計を壁の上部から下部に滑らせて値の急激な変化が無いか調べる
  3. サーモグラフィーで壁の温度を調べる.壁内が濡れていると温度が下がる

1,3 防災・災害ボランティア かわせみ提供.2 風組関東提供

罹災証明の内壁の損害の評価について
内閣府の被害認定基準運用指針では,内壁の断熱材の吸水は程度V,すなわち当該の内壁は損傷程度100%となります.
災害に係る住家の被害認定基準運用指針 参考資料(損傷程度の例示)【令和3年5月】 水害による被害[木造・プレハブ]
内閣府ストリーミング動画では「道連れ工事」ということばが出てきますが,「道連れ工事」をしないと程度Vに認定しない,という意味ではありません(内閣府防災に確認済).自治体で,断熱材の吸水を適切な方法で評価して下さい.
一般に,こうした場合,全ての内壁の断熱材が吸水しています.従って,平屋であれば内壁の損害割合は10%となります.木造2階建ての場合,1階と2階の損害割合の和が10%なので2階があるぶん,損害割合は下がるように思われますが,1階の方が生活に必須であることから一階に重みがつけられていて,また2階の方が床面積が小さいため,最終的には8~9%になる場合が多いと思います.

床下断熱材の濡れの確認

  • 台所等にある点検口を開けて,その周囲の断熱材が濡れていないか手で触って確認して下さい.
  • 床上浸水の場合は,例外なくグラスウール断熱材は吸水しています.撤去交換が必要です.
  • 床下浸水の場合,基礎パッキンや換気口より浸水深が高くなると,ベタ基礎内に水が浸入します.床下ぎりぎりの浸水の場合,断熱材が局所的あるいは全体が吸水している可能性があります.床下の水をポンプ等で抜いた後に,断熱材が濡れていないか,床下全体をチェックする必要があります.
  • 非接触水分計で室内から断熱材の濡れが分かる場合もあります.

床下断熱材の吸水の写真(防災・災害ボランティア かわせみ提供)

見た目は大丈夫そうにみえる.

切ってみると吸水した大量の水が落ちてくる

大量の水を含んでいることが分かる動画

切り取った断熱材の山

罹災証明の床の損害の評価について
  • 床下の作業のために床の一部を切るのは水害による被害とみなされます.
  • 床下断熱材の吸水は現在のところ,被害認定基準運用指針には入っていません
  • ゼッチ基準では,床下断熱材は沖縄県を除き必須です
  • 床下断熱材の撤去と交換には,かなりの人手と時間が必要です.現在の罹災証明が経済的損害割合であることを念頭において,自治体で判断すべきでしょう.

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